MAXIMIZING THE VALUE OF THE LAND
その土地、「お荷物」ですか?
それとも「資産」ですか?
人口減少・空き家時代を乗り越え、大切な資産を次世代に繋ぐための土地活用・完全ガイド
- 種別 相続
- 掲載日 2025年7月24日
親から受け継いだ大切な土地、あるいは長年所有してきた土地の活用法について、頭を悩ませていらっしゃるオーナー様は少なくありません。

「何もしなければ固定資産税の負担だけが重くのしかかる」「かといって、マンション・アパートを建てるのはリスクが怖い」。日本の社会が人口減少や空き家問題といった大きな転換点を迎える中で、かつてのように「土地は持っているだけで価値が上がる」という時代は終わりを告げました。今や土地は、積極的に価値を生み出す「動的な資産」となるか、放置すれば負担が増え続ける「負債」となるかの岐路に立たされています。
この記事は、そうした現実に直面する日本の土地オーナー様が、漠然とした不安を解消し、ご自身の土地が持つ可能性を最大限に引き出すための「羅針盤」となることを目指すものです。土地活用における失敗を避け、長期的な経済的安定と資産価値の向上を実現するための実践的な知識と判断基準を、5つのステップで解説します。
Step 1:なぜ活用するのか? すべての土台となる「目的」を定める

土地活用の相談で最も多い失敗の典型が、「何を建てるか」から考えてしまうことです。しかし、その前に最も重要な問いがあります。それは「何のために土地活用を行うのか?」という、ご自身の目的を明確にすることです。目的が曖昧なままでは、建設会社の提案を正しく評価できず、最終的に望まない結果を招きかねません。
オーナー様が抱える主な目的には、以下のようなものがあります。これらは互いに相反することも多く、ご自身にとっての優先順位を決めることが不可欠です。
- 相続対策
お子様やお孫様への資産承継を円滑に進め、相続税の負担を可能な限り軽減することが最優先の目的です。短期的な収益性よりも、税務上の評価額を引き下げる効果が高い活用法が重視されます。
- 安定収入の確保
年金の補完や将来の生活への備えとして、長期的で安定したキャッシュフロー(家賃収入など)を得ることを目指します。そのため、空室リスクが低く、運営コストが予測しやすい立地の良い賃貸住宅などが選択肢となります。
- 税金対策
「とにかく現在の税負担を減らしたい」という切実な目的です。特に、更地のままでは高額になる固定資産税や都市計画税を圧縮することが急務となります。
- 資産価値の維持・向上
インフレや市場の変動から資産価値を守り、さらには開発によってその価値を積極的に高めていくことを目指します。
- 将来の転用性(柔軟性)
「将来、子供が家を建てるかもしれない」といった可能性に備え、中長期的に土地を売却したり、別の用途に転用したりできる選択肢を残しておきたいという目的です。この場合、長期契約や大規模な建物を伴う開発は避け、駐車場経営のような身軽な方法が好まれます。
- 手間の削減
ご自身で管理・運営に関わる時間や労力をかけたくない、という目的です。自主管理、専門業者への管理委託、あるいは土地そのものを貸し出す事業(借地事業)など、運営形態の選択に大きく影響します。
例えば、「高い収益」を求めれば初期投資や管理の手間が増大し、「柔軟性」を求めれば税金対策の効果はほぼ期待できません。ご自身の目的という「揺るぎない軸」を持つことが、土地活用成功への第一歩です。
Step 2:「売る」か「活かす」か? 主要な土地活用法のメリット・デメリットを徹底比較

目的が明確になったら、次はその目的を達成するための具体的な手法を比較検討します。ここでは、代表的な選択肢の長所と短所を整理します。
1. 売却(現金化)
土地を売却し、現金に換える最もシンプルな方法です。
- メリット: 即座にまとまった現金が手に入り、固定資産税の支払いや管理の手間といった将来のあらゆる負担から解放されます 22。
- デメリット: 売却で得た利益(譲渡所得)には高額な譲渡所得税が課されます。また、先祖代々受け継いできた大切な資産を手放すことになり、建物を建てることで得られたはずの強力な相続税対策のメリットも失われます。

2. 賃貸住宅経営(アパート・マンション)
最も一般的で、税務上のメリットも大きい活用法です。
- メリット: 住宅を建てることで、土地の固定資産税評価額が更地の最大6分の1にまで軽減される「住宅用地の特例」が適用されます。これは最大の魅力です。また、相続税評価額も大幅に圧縮できるため、相続対策として絶大な効果を発揮します。
- デメリット: 建設のための初期投資が非常に高額になります。また、空室、家賃下落、入居者トラブルといった多様なリスクを抱え、管理の負担も大きいのが現実です。

3. 商業施設経営(店舗・オフィスビル)
住宅よりも高い収益が期待できる選択肢です。
- メリット: 住宅よりも高い利回りが見込め、法人テナントとの長期契約により安定収入に繋がる可能性があります。
- デメリット: 景気変動の影響を非常に受けやすく、一つの大きなテナントが退去しただけでキャッシュフローが破綻するリスクがあります。一般的に住宅よりもテナント探しが難しく、固定資産税の軽減効果も住宅ほど大きくありません。

4. 低リスク・低投資の選択肢
住宅よりも高い収益が期待できる選択肢です。
駐車場経営:
- メリット: 初期投資が少なく、いつでも他の用途に転用できる柔軟性の高さが魅力です。
- デメリット: 収益性は低く、固定資産税の軽減措置が全く適用されないため、税負担は更地と変わりません。

借地事業(土地を貸す):
- メリット: オーナー側の初期投資はゼロで、借主が建物を建てます。管理の手間なく、長期にわたり安定した地代収入を得られます。
- デメリット: 自身で建物を建てる場合に比べて収益は低くなります。最大の注意点は、借地借家法によって借主の権利が強く保護されているため、一度貸すと簡単には土地が戻ってこないことです。契約終了時に確実に土地を返してもらうためには「定期借地権」の設定が必須です。

活用法別 特徴比較表
活用法 | 初期費用 | 収益性 | 管理の手間 | 固定資産税 軽減効果 | 相続税 軽減効果 | 柔軟性/転用性 | 主なリスク |
---|---|---|---|---|---|---|---|
売却 | 低 | なし(一時所得) | なし | 解消 | なし(現金は100%評価) | N/A(永久) | 譲渡所得税 |
賃貸経営 | 非常に高い | 高 | 高(委託可) | 最大(1/6に軽減) | 最大 | 非常に低い | 空室・家賃下落 |
商業賃貸経営 | 最高水準 | 最高水準 | 高(委託可) | 中 | 高 | 非常に低い | 景気後退・テナント退去 |
駐車場経営 | 低 | 低 | 低~中 | なし | なし | 高 | 競争激化・低収益 |
借地事業 | なし | 低~中 | なし | なし | 高 | 非常に低い | 長期間の土地の拘束 |
Step 3:その計画、大丈夫? 事業に潜む「落とし穴」を直視する
特にマンション・アパート経営のような開発事業には、多くのリスクが伴います。計画段階でこれらのリスクを直視し、対策を講じることが失敗を避ける鍵です。

資金計画と収益のワナ
甘い資金計画: 建設費用のための自己資金が不足しているケースは、失敗の入り口です 52。現在、金融機関が全額を融資する「フルローン」は非常に稀で、総事業費の1~3割程度の自己資金が求められるのが一般的です。
家賃下落リスク: 新築時の家賃が永遠に続く保証はありません。建物の老朽化や近隣への競合物件の出現により、家賃は下落するのが自然です。当初の事業計画が、この下落リスクを現実的に織り込んでいるか、厳しくチェックする必要があります。
金利上昇リスク: 変動金利で多額のローンを組んだ場合、将来金利が上昇すると返済額が急増し、一気に収支が悪化する危険があります。
サブリースの「甘い罠」: 不動産会社が建物を一括で借り上げ、一定の家賃を「保証」するサブリース契約は、一見すると安心に見えます。しかし、これは「絶対的な保証」ではありません。契約書には、多くの場合「経済状況の変動等により、会社はオーナーに支払う家賃の減額を請求できる」という条項が含まれています。空室が増えれば、会社から家賃の引き下げを要求され、断れば契約解除に至るケースも少なくなく、社会問題化しています。

運営・管理のワナ
修繕費の見落とし: 建物は時間と共に必ず劣化します。外壁塗装や給排水設備の更新など、10~15年周期で発生する大規模修繕のための費用を、家賃収入から計画的に積み立てておかなければ、将来必ず資金繰りに窮します。
入居者リスク: 家賃滞納、騒音トラブル、ゴミ出しルールの違反など、入居者管理には多大な労力がかかります。また、高齢化社会の日本では、入居者の孤独死といった問題も現実的なリスクです。一度入居した店子を立ち退かせることは、借地借家法で強力に保護されているため、法的には非常に困難です。
安かろう悪かろうの管理会社: 管理委託費の安さだけで業者を選ぶのは危険です。管理の質が悪ければ、入居者の不満が高まり、退去に繋がります。結果として空室率が上がり、手数料の安さをはるかに上回る損失を生むことになります。
Step 4:知らなければ損をする。土地活用に必須の法律・税金ガイド
土地活用は、法律と税金のルールの中で行われます。この知識は、オーナー様の資産を守る「盾」となります。

知っておくべき三大法律
1. 用途地域 (都市計画法):
すべての土地には、自治体によって「建てて良い建物」の種類や大きさが厳格に定められています。例えば、「第一種低層住居専用地域」では、コンビニや小規模な店舗さえ建てられません。ご自身の土地の用途地域を市役所で確認することは、全ての計画の絶対的な出発点です。
2. 借地借家法:
この法律は、建物の「借り手(店子)」の権利を非常に強く保護しています。これが、一度家賃滞納などを起こした入居者でも、オーナー側から強制的に退去させることが極めて難しい理由です。
3.空家等対策特別措置法 (空き家法):
管理されずに放置され、周辺環境に悪影響を及ぼす「特定空家」に指定されると、自治体から改善の指導や勧告、命令が出されます。最も重要なのは、この勧告を受けると、
固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税額が最大6倍に跳ね上がってしまうことです。これは、放置に対する強力なペナルティです。
土地オーナーなら絶対知るべき税金
税金の知識は、どの活用法が最適かを判断する上で最も重要な要素の一つです。
税の種類 | 更地の場合 | マンション・アパート経営の場合 | 駐車場経営の場合 |
---|---|---|---|
固定資産税 | 高い(評価額そのまま) | 安い(土地の評価額が最大1/6に軽減) | 高い(更地と同じ) |
相続税 | 高い(路線価評価、約80%) | 最も安い(貸家建付地評価+債務控除で大幅圧縮) | 高い(更地と同じ) |
この表が示すように、日本の税制は「更地や駐車場として土地を放置すること」に厳しく、「その土地に人が住むための住宅を建てること」を強く優遇する構造になっています。相続対策としてマンション・アパート経営が広く選ばれるのは、この「固定資産税」と「相続税」のダブルの軽減効果が絶大だからです。
Step 5:失敗しないための意思決定プロセスと「相談相手」の選び方
土地活用という大きな決断を成功に導くためには、正しいプロセスを踏み、信頼できる専門家をパートナーに選ぶことが不可欠です。

推奨される意思決定のステップ
- 目的の再確認と優先順位付け: まずは原点に戻り、「何のためにやるのか」をご自身の中で明確にします。相続対策なのか、安定収入なのか。その答えがすべての判断の土台となります。
- 複数の専門会社から提案を入手する: ハウスメーカーや建設会社など、複数の企業に相談し、様々な活用プランの提案を受けます。この段階では決して一社に絞らず、比較検討することが重要です。
- 提案内容を鵜呑みにせず、自分で検証する: 業者から提示された家賃相場や利回りの想定が、本当に現実的かをご自身で確かめます。近隣の類似物件の家賃を不動産情報サイトで調べるなど、第三者の視点で裏付けを取る作業が不可欠です。
- 悲観的なシナリオで事業計画を再評価する: 「空室率が想定より5%高かったら?」「家賃が10%下落したら?」といった、あえて厳しい条件で収支がどうなるかをシミュレーションします。これにより、その事業計画が持つ本当のリスク許容度が見えてきます。
- 信頼できる専門家チームを編成する: 最終決定の前に、利害関係のない第三者の専門家に相談し、計画の妥当性を評価してもらいます。
成功の鍵を握るパートナー選び
土地活用はチーム戦です。オーナー様が一人で全てを背負う必要はありません。特に、以下の専門家は重要なパートナーとなります。
- 税理士: 相続税や所得税の観点から、どの活用法がオーナー様一家にとって最適か、長期的な視点でアドバイスをくれる最も重要な存在です。土地活用に詳しい税理士に相談することは、もはや必須と言えます。
- 不動産会社・建設会社: プランの提案から設計・施工、そして完成後の管理までを担う実行部隊です。複数の会社と面談し、自社の利益だけでなく、オーナー様の目的に真摯に寄り添ってくれるかを見極めることが大切です。
- 弁護士・司法書士: 工事請負契約書や賃貸借契約書のチェック、相続に関する法的手続き、不動産登記など、法律面でオーナー様を守る役割を担います。

日本の土地オーナー様を取り巻く環境は、確かに厳しいものです。しかし、その課題は乗り越えられないものではありません。成功の鍵は、一つの「魔法の解決策」を見つけることではなく、ご自身の目的を明確にし、市場を冷静に分析し、あらゆるリスクを直視し、信頼できる専門家の助けを得ながら、一つひとつ慎重にプロセスを進めることにあります。
最大の失敗要因は、市場のリスクそのものよりも、不確かな情報や聞こえの良い営業トークだけを信じて性急な決断を下してしまうこと、あるいは税金の負担に悩みながらも行動を起こさない「現状維持」にあります。
本稿が、オーナー様にとって悩みの種であった土地を、ご自身とご家族の将来にわたって安心と価値をもたらす、かけがえのない「礎」へと変えるための一助となれば幸いです。
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