アプリ全盛の時代にも
「退去立ち会い」にこだわる理由

不動産業界においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は著しく、電子契約やオンラインでの修理受付など、多くの業務が効率化されています。これらは入居者様、オーナー様双方に大きな利便性をもたらすものです。

そうした流れの中、「退去時」のプロセスにも変化が表れています。「無人立ち会い(または遠隔立ち会い)」と呼ばれる、新しい手法が導入され始めているのです。

「無人立ち会い」の利便性とは

管理会社の担当者が現地に赴かず、入居者様が室内の写真や動画を撮影・報告し、鍵を所定の場所に返却して退去を完了する仕組みです。

この手法のメリットは明確です:

  1. 入居者様の利便性
    日程調整の必要がなく、ご自身の都合で退去手続きを進められます。

  2. 管理業務の効率化
    担当者の移動コストが削減され、データ受領後すぐに次の業務(原状回復の見積もり等)に着手できます。

  3. オーナー様への期待効
    理論上、原状回復工事(※)が早期に開始できれば、その分空室期間が短縮され、収益改善に繋がります。

一見、三方よしに見える合理的な仕組みですが、賃貸管理の現場から見ると、その「手軽さ」が逆に大きなリスクやコストを生む可能性を内包しています。

効率化の落とし穴

不動産管理とは、単なる「モノ」の管理ではなく、「人」と「人の期待」を調整する業務側面が強いためです。特に契約の最終局面である退去時において、対面での確認プロセスを省略することは、いくつかの重大な問題を引き起こす要因となり得ます。

1. 対話機会の損失と、入居者様の不信感

入居者様にとって、退去は「敷金がいくら戻るか」という金銭的な不安が伴う重大事です。「この傷は費用負担の対象か?」といった疑問をその場で解消できないと、後日送付される見積書に対し、一方的な「請求」と受け取られ、不信感やクレームの火種となりがちです。

2. 写真では把握しきれない「現実」

タバコやペット、生活臭といった「臭い」。あるいは、床や建具の「深い傷」の程度。家具裏の「結露やカビ」の痕跡。これらは、専門家が現地で五感を使って確認して初めて判明するケースも多く、写真や動画だけでは見落とされる可能性があります。

3. 最大のリスク:「原状回復」を巡る認識の齟齬

これがオーナー様の収益に最も直結する問題です。

後日、写真では判明しなかった損傷が発見され、入居者様に費用を請求した際、「(立ち会っていないため)納得できない」「自分ではない」といった反論が起こり得ます。

結果として、敷金精算の協議が難航し、原状回復工事に着手できないという事態を招きます。

立ち会いの日程調整という数時間を「効率化」したつもりが、トラブル解決のために数週間、時には数ヶ月の遅延を発生させ、**深刻な機会損失(逸失利益)**に繋がるのです。

「対面立ち会い」が持つ本当の価値

こうしたリスクを回避するために、たとえ非効率に見えても「対面での退去立ち会い」が、依然として最も確実なリスク管理手法であると言えます。

 

「対面立ち会い」とは、単なる傷のチェック作業(検品)ではありません。**オーナー様と入居者様、双方の利益を守るための「相互確認と合意形成の場」**です。

 

現地で契約書や国土交通省のガイドラインに基づき、 「経年劣化・通常損耗」(オーナー様負担) 「入居者様の故意・過失による損傷」(入居者様負担) という線引きを、専門家の視点から明確に提示し、双方に説明します。

 

すべての確認事項をその場でオープンにし、双方が納得の上で合意書に署名する。このプロセスを経ることで、退去後のトラブルは劇的に減少し、何よりも**「合意が取れている」ため、即日、原状回復工事の手配が可能となります。**

目指すべきは「最適化」

もちろん、IT化による業務改善を否定するものではありません。導入すべき技術は積極的に導入し、オーナー様や入居者様の利便性を高める努力は、管理会社として当然求められます。

 

しかし、すべてのプロセスを画一的に「効率化」することが、最良の結果に繋がるとは限りません。

 

いつの日か、AIや3Dスキャン技術が人間の目と対話を完全に代替する時が来るかもしれません。

 

しかし「現時点において」は、金銭と信頼関係が関わる契約の最終局面こそ、専門家が介在し、対面で確認と合意を行うプロセスが、不要なトラブルを未然に防ぎ、オーナー様の大切な資産価値を維持し、結果として次の入居者様へと最も早く、円滑にバトンタッチするための「最適解」と言えるのではないでしょうか。

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